第二回ひなた短編文学賞にてアイデア賞を受賞された、つださま。
副賞として、思い出のつまったTシャツのリメイクオーダーを承りました。
大学時代の学園祭で作られたスタッフTシャツ。
部活動に情熱を注ぎ、仲間と笑い合い過ごした青春の証を、クッションカバーへと生まれ変わらせました。
-リメイク前-
-リメイク後-
-お客様からのメッセージ-
2006年、10代最後の秋、大学へ行くのは部活のため、部員のみんなと笑うため、というくらい部活にのめりこみ、まさに『青春』を絵に描いたような日々を過ごしていました。
これは大学2年生の頃に、学園祭にあわせて作ったTシャツでした。部内で作った、メンバー全員の名前が入った学祭のスタッフTシャツ。
このなかに、自分の名前が入っている。
メンバー全員なのだから、自分の名前があるのはあたりまえなのですが……それでも、ここに居場所があると、ここがわたしの青春なのだと明示されたような気がして、19歳の私はどこか、誇らしいきもちになった覚えがあります。
あれから19年が経ち、働き者の夫、かわいいふたりの子どもにも恵まれ、わたしはいつのまにか青春を眺める側になりました。時の流れとともに変化していく立場によろこんで身を任せながらも、タンスの中にしまってあったこの青春の欠片を、なかなか手放すことができずにいました。
そうして、2024年。この度リメイクして頂けるということで、真っ先に浮かんだのがこのTシャツでした。
もう遠い昔になってしまったけれども、私のなかにまちがいなくあった青春を、今、夫や子どもが座る我が家のリビングのソファーに置けることが、なんだか不思議でむずがゆく、そしてなによりも嬉しく幸せです。
ほんとうにありがとうございました。
第二回 ひなた短編文学賞|アイデア賞
タイトル: 結果オーライ、笑顔行き
筆名: つだ
「ママ、わたしのちっちゃいのつくって」
四歳になったばかりの娘が、突然そんなことを言い出した。ちっちゃいの、というのはどうやらマスコット人形のことらしい。お友達が通園カバンに付けていた、その子そっくりのマスコットを見て「わたしもほしい」ということになったのだそうだ。
そんなわけで私は今、手芸用の布が入ったケースを押し入れから引っ張り出している。埃をかぶった蓋を開けると、様々な布の端切れがごちゃごちゃに突っ込まれていた。今も昔も、大ざっぱなのは変わらないなぁと反省しながら布の山をかき分ける。すると、指先がふと、覚えのある感触にいきあたった。
「わ、なつかし」
布の山の中から見つかったのは、クッキー型で抜いたような人の形をしたマスコット人形だった。丸坊主の頭といびつな目鼻口が、私のことを見つめている。そうそう、これは。
「パパも、変わってないなぁ」
何ともいえないとぼけた顔をしている人形に、頬がへらりと緩む。これは十年前、夫と付き合い始めた頃に作ったマスコット。初めて出来た恋人に浮かれた当時の私は、彼を模した人形をクリスマスプレゼントにしようと決めたのだ。しかし言うは易しで、いざ始めてみると全然うまくいかない。手先が器用なわけでもないのに、見栄を張るからだ。でも、顔だけは妙に似せることができた。……そう、顔。おたまじゃくしの尻尾みたいにへにょりと下がった眉、何か悪さをした時に片方だけ上がる口元、つぶらすぎるサイズだけど誰よりも優しい瞳——
「よし、決めた」
私は夫そっくりのその人形の顔をじっと見つめた。いまからこの子は、娘へと生まれ変わる。だって、だっておんなじ顔してるんだもの。なにも手直しする所がないくらい、親子そっくりなんだもの。おさげの髪を垂らして、幼稚園のスモックを着せたらもう、この子は娘だ。
ここまで出来ているのなら、きっと今日の夜には完成している。そうして明日、この子は娘の幸せな笑顔とともに幼稚園バスに乗るんだろう。これを作り始めたときの私の思惑とはずいぶん違ってしまったけれど、夫にそっくりなマスコット人形は、娘のために生まれ変わって第二の人生を歩む。うん、それってなかなか素敵なのでは。そう頷くと、私はうきうきしながら針を取る。そして、十年前よりも少しだけ慣れた手つきで、作りかけのマスコット人形に新たな命を吹き込んでいったのだ。
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