受賞作品を読む

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ひなた短編文学賞結果発表

ひなた短編文学賞にたくさんのご応募ありがとうございました。
合計800作品を超えるご応募の中から、選考委員が厳正に選出した受賞作品を発表いたします。



主催者総評

フレックスジャパン株式会社
代表取締役社長 矢島隆生

アパレルメーカーであるフレックスジャパン株式会社は衣料品のリメイクをするアトリエ「ひなた工房双葉」を7月27日に開業しました。 衣料品に沁み込んだ想い出までをも含めてリメイクすることができればとの願いから開業記念イベントとして「生まれ変わる」をテーマにした本文学賞を開催しました。 それぞれに素敵な817篇の作品が集まりました。 その多くの作品には作者ご自身への心の癒しやエール、あるいは大切な人達への想いが溢れていました。 「書く」という行為そのものの素晴らしさにまで気付かせてもらえる作品群でした。 本文学賞を開催するに当たっては生成AIによる作品をどうするべきかを悩みました。 せっかく人間が手に入れた「書く」という能力を使わなかったら勿体ない。 自分で書くから自分にも戻ってくる。 仮にAIの作品であっても読んで感動でするとすればそれは物語の登場人物を生身の人間に 置き換えて想像できるから。 結局「人間ってやっぱりいいな」 この文学賞を通じて私自身が辿り着いた結論です。 ご投稿頂きました皆様と開催・運営にご協力頂きました個人・企業・団体の皆様に心よりお礼申し上げます。 どうもありがとうございました。
最後になりましたが各賞受賞者の皆様にはお祝い申し上げます。とても素晴らしい作品でした おめでとうございます。



大賞

「可愛がって下さい」

田原にか

双葉町長賞

「愛を紡ぐ細胞」

蒼月友

MFU賞

「焦げ跡」

彼方ひらく

準大賞

「Reincarnation」

流灯祭


「逆メタモルフォーゼ」

辻内みさと

佳作

「父のサムシングブルー」

寿すばる


「掌に我が子」

千葉紫月


「太陽」

立花伊織


「太陽の粒」

相川朱里


「散歩」

春野息吹


「ダディベア」

望月滋斗


「波に揺られて、」

吉田六


アイデア賞

「掌に我が子」

千葉紫月


「母の形見」

結城刹那


「虎の支え」

明日香


ティーンズ賞

「ひかり」

猫戶寧


「祖母の家」

相原梨彩


「向日葵と走る」

昼川伊澄


「太陽」

立花伊織


「太陽の粒」

相川朱里

審査員総評

選考委員長
塚田浩司氏
小説家


受賞された皆様この度はおめでとうございます。また、応募していただいた皆様、ご助力いただいた関係者の皆様には心より感謝いたします。まさか817作品も集まるとは思っていなかったので下読みはかなりしんどかったです(笑)しかしその分素晴らしい作品を選出できたと思っています。
大賞作品には「可愛がって下さい」を選ばさせていただきました。こちらの作品は斬新なアイデアが際立つ、純粋に楽しい作品でした。しかし、それだけにとどまらず、双葉町やひなた工房のテーマである「再生」をうまく取り入れています。奇妙な設定にもかかわらずラストには感動してしまいました。本当に素晴らしい作品です。おめでとうございます。
「掌に我が子」は大賞作品と並び強く推した作品でした。今回、リメイクを扱った作品がたくさん集まりましたが多くの作品に共通したのは故人への想いでした。しかしこちらの作品は生まれたばかりの我が子に対する父親目線の物語です。明るい未来が見えるような前向きな作品でした。赤ちゃんの服をリメイクするというアイデアに魅力を感じ、こちらの作品は佳作とアイデア賞とのダブル受賞となりました。おめでとうございます。
「ダディベア」はエンタメ作品として純粋に面白かったです。ショートショートとは思えないほどの展開力に驚かされました。
「太陽」は佳作とティーンズ賞のダブル受賞です。ビーチボールに吹き込まれた彼の息が抜けていく描写に、切なくなりました。女性が前を向こうとする素晴らしい作品でした。
「太陽の粒」こちらも佳作とティーンズ賞のダブル受賞です。失恋の痛みと、彼からもらった思い出の品をリカちゃん人形に背負ってもらうという発想が面白かったです。
「波に揺られて、」悲しい物語ではあるのですが、前向きなメッセージがよかったです。特に「あなたたちにも今を生きてほしい」というセリフが胸に響きました。
上記以外の受賞作品や受賞作品以外にも素敵な作品はたくさんありました。応募者のみなさまがテーマと向き合い、双葉町やひなた工房の想いに寄り添って執筆してくださったことがとても嬉しく、たくさん感動させていただきたした。また、私自身小説を書く身としてとても刺激になりました。ありがとうございました。



選考委員
八木原保
一般社団法人日本メンズファッション協会理事長

「焦げ跡」
娘の父母への想い、息子の父への想い、妻の夫への想いがショートストーリーの中で見事に錯綜する作品です。 この家族は一体どうなるのだろうという状況を「焦げ跡」の「焦げ跡」によるリメイクが救います。 実際のリメイクとしても突飛かつ大変クリエイティヴなアイデアです。


選考委員
伊澤史朗氏
双葉町長


まずは、「ひなた短編文学賞」に応募いただいた多くの執筆者の方々ならびに、文学賞開催に関わったすべての方々に厚く御礼申し上げます。「生まれ変わる」をテーマにした作品が数多く集まり、私自身も審査員の一人として応募作品を読ませていただきましたが、切なさに涙するもの、資源循環を示唆するもの、感謝の念が込められたもの、様々な切り口での「生まれ変わる」を感じました。 双葉町は、東日本大震災と原子力発電所事故により甚大な被害を受けた町です。2022年8月30日の一部避難指示解除により、震災から約11年5か月ぶりにようやく人が住めるようなり、まさに双葉町は復興して、生まれ変わろうとする途上にあります。 今回の「ひなた短編文学賞」をきっかけに、一人でも多くの方に双葉町に関心を持ってもらい、生まれ変わる双葉町の姿を見ていただきたいと思います。

「愛を紡ぐ細胞」について
夜明け前の海を眼前に、男女二人が取り交わす儚げな会話に、感情を揺さぶられました。これまで多くの人と出会い、大切な存在も増え、そして今の自分が構成されていることを実感しました。



選考委員
蜂賀三月氏
Web Novel Labo 運営者


今回、この素晴らしい文学賞に携わり、大変貴重な経験をさせていただきました。文学賞を創設するにあたって、私自身応募者に近い立場で『ひなた短編文学賞』と向き合ってきたように思います。 応募者の立場からすると「生まれ変わる」というテーマを、約1,000文字で表現することはものすごく難しいはずです。生と死を連想させるこの言葉は、センシティブな内容になりやすい側面があります。また、物語によっては、他人に触れさせたくない内面的な部分を表現することにもなるでしょう。このテーマのなかで、表現や物語の着地点に迷った方も多いのではないでしょうか。 応募いただいた817作品はどれも「生まれ変わる」というテーマに込められた想いに寄り添ってくれていました。それぞれの「生まれ変わる」物語が、キラキラと輝いているようでした。それゆえに、選考は大変難しかったです。応募作品のなかにはフィクションはもちろん、セミフィクション、そしてノンフィクションの作品もあったように思います。それほどまでにリアリティを感じさせる体験・ショートストーリーがありました。 ショートショートとしての面白み・テーマとのマッチング・メッセージ性はどうか、文章やアイディアはどうか、選考に関わる全ての人間が様々な視点から作品と向き合いました。ぜひ、その物語たちに触れていただけると嬉しいです。たくさんの素晴らしい作品を、ありがとうございました。


それでは、応募作品のなかでも特に印象に残った作品について、コメントをさせていただきます。

「可愛がって下さい」
突飛でユニークな設定で、多くの審査員の心を掴みました。「生まれ変わる」というテーマをSDGs・リサイクルの視点から見事に表現している作品です。物語としての面白味もあったうえで、現実的なメッセージが伝わってきます。しっかりと説明すると難しくなる話を、楽しく読めるショートショートのなかに落とし込んでくれているのではないでしょうか。ショートショートの可能性を感じさせる作品でもありました。

「逆メタモルフォーゼ」
 元アイドルの女の子の辛い挫折体験……からの前向きでまっすぐな努力が気持ちいい作品でした。挫折を表現しつつも、全体のイメージは暗くならず、あたたかい作品になったのは作者の筆力があるからでしょう。そして、他者を応援する大切さにも気づかせてくれます。元気がもらえるショートストーリーです。

「Reincarnation」
 リアリティを感じるショートストーリーでした。父親、そして娘の立場からの苦悩、どちらにも感情移入してしまいます。この人間ドラマをうまくまとめていた点を評価しました。故人との想い出を忘れるわけでもなく、無理に乗り越えるわけでもなく、今はただともに歩んでいきたい。人の感情の複雑さと尊さを、この物語から教えてもらったように思います。

「父のサムシングブルー」
 応募作品のなかで飛びぬけてバランスが良い作品でした。作者が意図したかどうかはわかりませんが、細かな配慮が作品の至るところにあり完成度が高かったです。物語の内容、読後感、文章から想像できる映像は、ひなた短編文学賞が求めている作品を具体的にイメージして創られていました。人と服に込められた想いを、リメイクを通して繋いでいく。素晴らしいショートストーリーでした。

「散歩」
 “思い出の再生”を大切な家族の“犬”を通して表現した作品です。柔らかな毛の感触、感情豊かな尻尾、その愛らしさがわかるからこそ、胸に迫るものがありました。作中にあったリメイクのアイディアも素晴らしく、まさにこれから前を向いて、ともに歩いていくメッセージが込められているようでした。切なくて、あたたかい、春のような物語です。

受賞された皆様、おめでとうございます。
ひなたの道を歩きたくなるような、素敵な作品ばかりでした。 皆様の作品が色々な人や場所に届くのを楽しみにしています。