物語から生まれたリメイク作品

2023年6月、ひなた工房双葉の開業を記念して「ひなた短編文学賞」を開催いたしました。

衣料品のリメイクを題材にした作品の中から、優れたリメイクのアイデアが含まれる作品に対し、作中に登場するリメイク品を実現し贈呈される「アイデア賞」を設け、実際にアイデア賞に輝いた物語から生まれたリメイク作品を受賞作とともにご紹介いたします。

 

アイデア賞
『掌に我が子』千葉紫月

 駅を降りると、急な夕立に出くわす
 バス停は大行列。小遣いをやりくりしている身としては、簡単にタクシーは乗れない。
「仕方ない、走るか」
 カバンを傘にして家まで走る。

 
「ただいま」
「おかえり。随分濡れちゃったね。傘持っていかなかったの?」
 びしょ濡れになった姿を見て、妻の葵が呆れたように言った。
「雨降るなんて天気予報で言ってなかったからさ」
「だから、いつも折りたたみ傘持ちなさいって言っているのに。直ぐにお風呂入る?」
「そうするよ。湊は?」
「今起きたところ。ついでにお風呂入れちゃってくれない?」
「了解」
 湊はこの春生まれた、初めての息子だ。
 ベッドを覗くと夢中になってメリーで遊ぶ湊の姿が見えた。
「ただいま、元気だったか?」
 顔を近づけるとキャイキャイと楽しそうに笑う。
「もっと育休取れば良かったな」
 産後二ヶ月は育休を取得した。仕事の関係、金銭面など考慮すると、そのくらいが限界かなと思って取得したが、今思えば無理してでも、もっと育休を取れば良かったと後悔している。
「早くお風呂入らないと風邪引くわよ」
 葵に言われ、急いでスーツを脱ぎ、湊の服も脱がせる。
 湊の服を脱がせると太腿に赤い跡が残っていた。
「もう六十センチの服じゃ小さいかもな」
「えー、こないだ買ったばかりなのになあ。しょうがない、七十センチの服を出しとくからお風呂出たら、それ着せてあげて」
「小さくなった服はどうするの?」
「もったいないけど、処分するしかないね」
 この空色のロンパースは自分が初めて湊に着せた服だったので、少し残念だった。

 
「鞄も濡れていたから、干しといたよ」
 お風呂から上がると広げた新聞紙の上に鞄が干されていた。
「ありがとう。中身まで濡れていた?」
「そこまでじゃないけど、これはもうダメだね」
 通勤の友であった文庫本は見るも無惨な姿になっていた。
「明日からは折りたたみ傘持っていくよ」
「そうした方がいいね」

 
 翌日は昨晩の雨が嘘のように快晴だった。
「行ってきます」
「ちょっと待って」
 玄関口で葵に呼び止められる。
「これ持っていって」
葵の手には見覚えのある色のブックカバーが握られていた。
「もしかして、湊の服か?」
「上手く出来ているでしょ?」
「器用なもんだなあ」
 素直に感心してそう言った。
得意気な顔をした葵に送り出してもらい駅に向かう。
 電車に乗り早速ブックカバーをつける。
 本を手に取ると、まるで湊を抱いているような気がして心がとても温かくなった。

 

 
作者の千葉さまよりお預かりしたロンパース

 


ポケットやスナップボタンを活かしてブックカバーに

 

-受賞者からのメッセージ-

リメイク品確かに受け取りました。

思い出を素敵な形に残せて、とても嬉しく思います。

これからこの子が大きくなるにつれ、大変な事も沢山増えていくかもしれません。

でもこのブックカバーを見るたびに、この子が産まれてきてくれた時の初めの感動を思い出して、きっと頑張っていけると思います。

この度は本当にありがとうございました。改めて御礼申し上げます。

 


作者である千葉紫月さまのお子さんの着ていたロンパースをリメイクさせていただきました。

 


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